さそり庵



Happy birthday to dear MEMORY

ななこさーーーーん!!!



さあさあ待ちに待ったななこさん回!
などと浮かれている場合ではない。ひかる、いつきと心配してきて、とうとう嘘をつく大人の登場だ。いやいや、大人は嘘つきではないのです。間違いをするだけなのです。
お父さんのあの弱気な表情は、娘さんに対する申し訳なさの表れか、それともただ年頃の娘への接し方がわからないだけか。いずれにしても、ななこさんを大事に思っていることだけは間違いない(と思いたい)。
が、そんなのは子どもの知ったことではないのだ。両親の犯した間違いはななこさんを傷つけ、孤独の中に突き落とした。そのことに間違いはない。

ご両親への糾弾だか擁護だかはさておき、ななこさんは他の四人とは少し違うテーマを抱えていたようだ。
ひかるたちが何かを恐れ、踏み出すのを躊躇っていたのに対して、ななこさんは何かを(孤独を埋めてくれるものを)求め、手を伸ばし続けていた。そんな風に見えた。
ただ、手を伸ばしながらも、結局は手に入らないと信じることで自分を守っていた。予防線の内側から出て来ずにいた。その意味では、彼女もまた恐怖に囚われていたといえるのか。

ななこさんが様々な知識、特に言語に精通しているのは、新しい世界や誰かとの出会いに焦がれている証であるように思う。もちろん、一番の望みは弟と母との再会だったろう。折々に届く手紙から、二人がいる国のことを熱心に調べ、そうすることで少しでも近づこうとした。でもそれが気休めにもならないことを、幼いながらに彼女は知っていた。だから結局は、押し寄せる孤独感を受け容れるしかなかったのだ。「人は誰だって一人独り」、これは当たり前のこと、と。
そう考えると、彼女の奇矯な魔女コスは、孤独=他者と関わらず異境で生きる自分を割り切るためのアイテムか。いやいやあるいは、そうした格好をしてみせることで誰かに気づいてもらおうとする、無自覚なSOSだったのか。
いずれにしても、未来=可能性に向かって手を伸ばす彼女にプレアデス星人が惹き寄せられたのは必然だったように思う。会長は未来が欲しい。ななこさんは友だちが欲しい。パズルのピースが填まるようにして、二つの存在は巡り逢ったのだ。

その出会いは、ななこさんが長い長い旅の果てに遂に手にしたものだった。それこそ太陽系外縁まで歩いて歩いて歩き続けて、彼女は約束の地へ辿り着いた。
諦めの鎧を着ていた彼女にとって、その出逢いは星を見つけるほどに意外なものだったのだろう。あり得ないはずのものとの遭遇。だから、手を取り合い、抱き締めながらも、彼女はその星に欺瞞と失望の名をつけた。この星がくれる温もりは偽り。身を委ねれば失望する。自分にそう言い聞かせることで心を守り、同時に、そんな呪文で心を偽る自分自身と重ね合わせた。人は独り、自分は独りが似合っているといううそぶきが欺瞞であることを、彼女はとっくに知っていたのだ。

世界の言語に通じた彼女が、「ぽ・わ~む」という造語を使う。この言葉はもともと、彼女がその概念を地球上に存在しないものと捉えていることの象徴だったが、今、「ぽ・わ~む」は彼女自身の胸の中で観測された。それは同時に、彼女が変わってゆけること、魔法使いとしての時間が終わって元の運命線に還っても、独りぼっちの魔女に戻ることはないということの発見でもある。誰かといっしょに星を見たい、お誕生日を祝ってほしいと願う女の子の復活だ。
お誕生日おめでとう、ななこ。

……と綺麗に締めたかったのだが、引っかかる点が残っているのでまだこの文章は続く。
他でもない、ご両親の件。
ひかるやいつきの話をしたとき、私は彼女たちのことを「還ってきた」と表現した。ななこにもこれを適用すべきか、書きながらまだ悩んでいる。
というのも、彼女の居場所はやがて父と暮らす家に落ち着くとして、そこに「帰って」いくのかどうかが判らないのだ。
彼女にとって、そこで待つ父は嘘つきの共犯(母との)でしかなかった。だからこそ彼女は幼い心に孤独を抱え、父の存在など見えぬかのように生きてきた(もっとも離婚うんぬんを抜きにしても、あの年ごろの子どもにとって親の存在とは見えぬものだが……)。先にも触れたあの魔女コスは、嘘つきの大人になんかなりたくないという思いの表れ、黒く染まったピーターパンでもあったのだ。
帰る(還る)とは、いるべき場所に戻ることをいう。ななこにとって、家とは居るべき場所だったのか。そこにしか身の置き場が無いから、仕方なく居たというだけではなかったか。
恐らく、今後は変わる。父は嘘つきの共犯ではなく、家族が四人で過ごした思い出を共有する者として、家はその思い出が息づく場所として再構成されることだろう。すばるとあおいの姿を見たななこになら、ピーターパンを卒業して誕生日を迎えたななこになら、変えていくことができるはずだ。
だが多分、それは「帰る」ということとは違う。彼女はそこに辿り着き、それまでとは違う意味を与えた。生まれ変わったななこの家は、孤独に生きていたあの場所から0.25光年離れた先にあったのだと思う。
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by sasop | 2016-06-07 18:35 | 放課後のプレアデス
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