さそり庵



振り返ってアニマス 全4部―③

1.華やかな私服に見るアニマス世界の“余白”
2.武闘派に非ず――第8話と第17話に見る専守防衛の拳
3.真王子――友の存在とアニメ独自の精神的成長
4.雑記





3.真王子――友の存在とアニメ独自の精神的成長

ああ、菊地真ジャージ論の次はなんだか『2』批判みたいになってしまった。嘆かわしい。
ですがここからは視点の中心がようやくアニマスを捉えます。アニマスで描かれた真のアイドル活動について。

馴染みも深い「真王子」という単語がアニマスで初めて現れるのは、意外なことに真にスポットライトが当たる第17話を待たねばなりません。
考えてみればこれは当然のことで、13話以前の彼女たちは世間的にさほど露出の無い二流以下の地位に甘んじていました。
王子様でも歌姫でもない、竜宮小町と同じ事務所の十把ひとからげ――そんな境遇でも、事務所の他のアイドルと同じく真は懸命に働いています。
第8話でタキシードを着せられてぶーたれたり、第13話で竜宮未着の不安から響と口論になったりしていますが、基本的には安定していて、仲間にとっても頼れる存在として描かれていたように思います。
第3話、第12話で雪歩を励ます言葉や、第13話で響とともに美希のサポートを託されるシーンは、真が仲間に注ぐ温かい視線と、仲間たちが真に寄せるここ一番の信頼が現れているようで印象深いですね。
さて、真の安定感は第14話以降も健在で、『王子様』として注目され始めてからは、世の奥様お嬢さん方を許されぬ道へと次々引きずり込んでゆきます。この傾向が当人にとって極めて不本意であることが明言されるのは第17話ですが、同回ではそれとともに「でも今はこのまま頑張る」という本人の決意も明らかになります。第17話終盤の本人の言葉、

「ボク、頑張って王子様やってみようと思います。
 中途半端な気持ちじゃなく、真剣に向き合って。(中略)」
 そりゃ、(お姫様は)憧れますけど――
 でも、いつか誰かたった一人、ボクのことをちゃんと女の子扱いしてくれる人が現れるなら――
 今は、これでいいんです」

この通り。直後に入った王子様仕事に早速文句を垂れているところまで含めて、「ああ真だな」と納得できる、錦織監督の愛と理解が詰まった名シーンです。

と、ここでまたまた『1』との違いについて考察。
第17話当時、季節は秋。第13話が台風逆巻く夏場だったことと、それ以前は個性を発揮しづらい数合わせの仕事が主だったことを考えると、真が王子様として明確に世に打ち出されたのは、ほんのここひと月ふた月でしかありません。
人気の度合いで言えば、これは恐らく『1』で言うランクDか、高くてCほどに相当するのですが、『1』においてひと月やふた月(活動4週~8周程度)でDやCに到達するのはプレイ方針にもよりますがなかなか難しく、大抵はまだランクFやEに位置して、理想と現実の間で真が四苦八苦しているタイミングです。
FやE当時の真は、まだ自棄になったりファンに不満を持ったりすることが多く、Pにたしなめられることもしばしばだったのですが、アニマスではもうこの時点で「たった一人理解してくれる人がいればいい」というところまで成長しています。これは大変大きな違いで、この差をもたらしたのは間違いなく、765プロの仲間たちという沢山の理解者の存在であると考えられます。
自分の素顔と願望をわかり、応援してくれる同性の友人。こうした、プロデューサー以外の人物との関わりが大きく取り上げられるのが(繰り返しになりますが)アニマスとゲームとの違いであり、それに伴う「成長のしかたの違い」を観察するのも、アニマスのひとつの楽しみ方でした。

真が「たった一人の理解者=王子様」を見つけ、「男っぽいとか女っぽいとかより大事なこと、たくさんあるし。これからは拘り過ぎないで、もっと自由にやっていこうと思います(アイマス1コミュ・ランクアップBより)」と笑顔で語るようになるのは、まだもう少し先のことであり、当然ながらアニマスでそれが描かれることはありませんでした。第22話で未だにフリフリの可愛らしい衣装にこだわっていることから明らかです。

で、興味深いのはここからです。
王子様で頑張ると誓った真は、第23話でスノーフレークリリパット、第24話キャンディレディという、まさにそのフリフリで可愛らしい衣装をまとってカメラの前に立っています。
これは衝撃的なことです。また『1』の話をすると、『1』の真にはどれだけランクを高めたところで女性的な仕事は来ません。むしろ成功すればするほど『芸能界の貴公士』だの『ベスト美少年アワード』だのと、開き直ったように男っぽい話題が増えていく始末。世間にそのイメージで定着したのだから当たり前ですが――真自身はごく自然にそれを受け容れ、Pもまた手を緩めることなく、徹底して真王子のイメージを貫きます。『1』の菊地真シナリオに於いて極めて重要な要素と言って良いでしょう。
およそ『1』の真のテーマは「成功すればするほど理想からかけ離れていくジレンマ」と「ファンの期待に応えたい想い」、「夢は叶わなかったけれど、もっと大切な宝を手に入れた」という三つの柱に集約され、真がデビュー当時に持っていた夢は、とうとう手の届かなかったものとして、またそれで良いものとして決着します。
が、アニマスでは必ずしもそうではなかったようです。恐らくはプロデューサーが真自身の希望――切望――悲願――を容れて、いくらか可愛らしい印象の仕事を回してくれたのでしょう。この壮挙が世間的にどう評価されたかは語られていませんが、恐らくはそれなりに好評だったのだと思われます。世の不興を買う人選を続けられるほど765プロはまだ強くありませんし、真自身にしてみても、敢えてファンに嫌がられてまでフリフリを着ようとは思わないでしょう。それに相応しい自分になってから、と、彼女なら考え、努力するはずです。

この点、アニメの真は世間的にもゲームとは違うユニット・イメージを確立しています。
アイドル想いのプロデューサーの人柄の現れでもありますが、また同時に、アニマスの環境で真の心を保つために不可欠なことだったとも考えられます。
『1』で真が王子様役を続けられたのは、Pという理解者が常に隣に在り続けたからです。それが明言されるのはゲームも最終盤になってからですが、事実としてはプロデュース開始当初からずっとそうでした。
が、アニマスではそうはいかない。プロデューサーは律子と二人で12人全員の仕事を管理していて付きっきりには到底なれず、その役割を担い得る仲間たちはそれぞれの活動で別の場所。理想とニーズの間で苦しみ倒れたのはアニマスでは春香でしたが、プロデューサーの配慮が無ければ真も相当危うかったはずです。劇中では取り上げられなかった、プロデューサーの隠れた大ファインプレーであったと言っても過言ではないでしょう。

そういえば、前々回も取り上げた生っすかサンデーの菊地真改造計画。あれの存在はどう考えても謎としか言いようがなく、その場限りのギャグとして笑い転げておくのが穏当なところだと思います。あの手の格好をファンに見せてはいけないという自覚は有るはずの子だから(アイマス1ランクEコミュ『ミーティング』、同ランクD『一日署長』参照)――というのは昨今の設定変更の一環かもしれないので弱いとしても、真王子のイメージにとってあれはマイナスにしかなりませんから。いかにも沸点の低そうな真ファンの性質を考えると、おふざけにしても流石にまずすぎる。
そもそも第15話自体が、アニマス以前からのアイマスファンに対するサービス回であることは明白で、765プロ全員参加の番組が有るということだけ了解して、中身の方は今回限定のギャグと割り切ってしまうのが正しいエピソードだったのではないでしょうか。
でなきゃ千早とかどうなってしまうんだ。

第4項に続く
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by sasop | 2012-11-12 22:31 | ときどき雑記
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