さそり庵



振り返ってアニマス 全4部―①

さてこのたび、ちょいと縁あってアニマスで描かれた真についての感想をまとめてみようと思います。
かの名作ももう放送から二年、今さら今さらというところですが、もう20周したアイマス1を最近になってさらに3周した(動画制作のため)私のこと、その手のズレは最早習性とご理解くださいませ。

なお、表題にもあるように全四部構成となっております。
目次はこのように。

1.華やかな私服に見るアニマス世界の“余白”
2.武闘派に非ず――第8話と第17話に見る専守防衛の拳
3.真王子――友の存在とアニメ独自の精神的成長
4.雑記



全編書き終えた今あらかじめ言ってしまうと、結局『感想』にはなりませんでした。
こういうのは『考察』と申します。

では、以下つらつらと。



のっけから嫌な話になりますが、私は放映開始以前、真の描かれ方については大きな不安を抱いていました。
同年2月24日発売のゲーム『アイドルマスター2』に於いて、菊地真はそれまでの彼女とは似ても似つかぬただの暴力娘として描かれており、それがアニメにも引き継がれているのではないか、と。監督の錦織氏ご自身が真フリークという話は聞いていましたが、それでもやはり不安――いやさ、公式サイドに対する不信は拭いきれるものではありませんでした。
結論から言えば、そうした不安は杞憂に終わります。
歓喜と感謝。菊地真の描かれ方に、私はテレビ放送全25話を通してそれを貫くことになりました。
素敵な真をありがとう。真をこんなに魅力的に描いてくれてありがとう、と。

華やかな私服に見るアニマスの“余白”
アニマスにおけるアイドルたちの私服のデザインやバリエーションの豊かさは、既に各所で取り上げられていますが、真にしてもそれは例外ではありません。彼女もパンツルックのボーイッシュな服装を中心に、時には(第5話、第12話等)女性的なおべべに身を包んで事務所に姿を現しています。
一着一着が非常に魅力的で、そのデザインに関しては「可愛い」以外の言葉を差し挟む余地が無いのですが――
実はこの『毎回違う服を着ている』こと。これ、真にとってはとても重要なことです。と同時に、アニマスという世界観のひとつの大きな象徴でもあるとも考えられるのです。

ご存知のように、真は16歳当時、いつもジャージで過ごしていました。それがああしたお洒落をするようになったというのは、極めて大きな変化と言えるでしょう。
――と、ここで注釈として、「いつもジャージとだったいうのは無印のゲーム上の制約ではないか」という疑問に対する回答を。その問いごもっとも。現に『SP』の真は菊地レーシングのTシャツに縞のパーカーといういでたちにお着替えし、私はじめ多くの真勢を片端から撃墜してくれました。
が、それでも私は敢えて、16歳当時の真は普段からジャージを着ていたと主張したいのです。
その理由をお話しします。
そもそも真は何故、わざわざジャージなぞを着ていたのでしょう? 女の子らしくなりたい、女の子として認めてもらいたいはずなのに、よりにもよって。
理由は大きく二つあると考えられます。
ひとつはごく有名な問題。可愛い服を買っても父親に捨てられてしまうから。
まあ、そちらはすったもんだの末に父が折れたという解釈で、先に決着をつけておくとして――
重要なのはもうひとつの方。すなわち、真が思い描く『憧れの自分像』に、ジャージ姿という要素が含まれていたから。
根拠となるのは、無印のランクDコミュ『ある日の風景3』。ここで真は、自分がアイドルを夢見たきっかけを話してくれます。

「ボクが中学生の頃、このステージで、ダンスの練習をしてた、女の人たちがいたんです。
 使い古したジャージで、必死に踊ってて。(中略)
 それでも、あの頃のボクには、まぶしかったです。なにかに打ち込む姿って、いいなって。
 女の子としてのかわいさと、あの真剣さ。その両方が、どうしても欲しくて……
 それでボク、アイドルになるしかないって、思ったんです!」

懸命に踊る劇団員への憧れが、真を動かした原動力でした。
流れる汗のひと粒ひと粒までも焼きつけていた真の目に、彼女たちが身に着けていた『使い古したジャージ』が残らなかったはずはありません。一途で、まっすぐで、単純で、形から入りたがる真のこと、彼女らへの憧憬から、また彼女らと自分を重ねていたいという想いから、彼女たちとおそろいのジャージ姿でプライベートを過ごしていたと考えることは充分に可能なのです。
とすれば、ジャージ少女から一般的なパンツルックへの変化はよほど重要なものであると捉えざるを得ません。

――が、実際のところ、その辺の前日談は(劇団員のエピソードも併せて)アニメでは語られることはなく、真がアイドルを目指した理由も、第17話で本人がこうぶちまけるのみに留まっています。

「父さんは、ボクをどうしても男として育てたかったらしいんです。(中略)
 おとこおんな、なんてよくからかわれたりしてました。
 だから、お姫様に憧れて。長い髪、素敵なドレス、素敵な王子様との出会い――
 そういうのを夢見て……アイドルになったはずなのに!」

単に語られなかっただけか、それとも設定自体オミットされて、真の理由は『1』とは別のものに変わってしまったのか、判断のしようもありませんが……この場合、それは重要ではありません。どちらでもいい。どちらとも取れる。だって語られていないのですから。
大切なのは、真の服装の変化にまつわるエピソードを想像させてくれる、世界観の余白の存在の方です。
765プロ入所当時、『1』同様のいでたちだったと仮定するなら、その卒業の後押しをしたのは春香や伊織をはじめとする仲間たちでしょう。後の『生っすかサンデー・菊地真改造計画』に先立つ、『第零次菊地真改造計画』が大規模に展開されたことは疑いを入れません。
誰が、どのように真を『改造』していったのか、アニマスの前日談に想像が膨らむところです。

そもそもゲーム・アイドルマスターとアニマスの最大の違いはPとアイドル一人一人の距離感にあり、ゲームではアイドルと二人三脚で酸いも甘いも踏み越えてゆくプロデューサーは、アニメでは一歩下がった相談役という立ち位置を崩しません。ゲームでPが担っていた役割の多く(すべてではない)を、13人の仲間たちがそれぞれに受け持ち、皆で結束して支え合うのがアニメ・アイドルマスターで描かれる765プロという共同体であり、また、作品全体を貫くテーマでもあることは、広く知られているとおりです。
第零次菊地真改造計画は、そうしたアニマスならではの大イベントであり、語られることの無かった前日談に思いを馳せ得る魅力的な世界観の構築に、改めて感謝の意を禁じ得ません。

第2項へ続く。
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by sasop | 2012-11-12 22:25 | ときどき雑記
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